SS

纏まりのないシャンエー。
ごめんなさい、ちょっと書きたくなってしまいました。


後藤の中ではエースはチョコ派なんです・・(笑)

皆が沸き立つ季節になった。
今年は誰と過ごすかと、皆考えあぐねつつも、顔が綻んでいる。
残り一ヶ月を切って、心待ちにする者も、焦る者もいるが、エースは後者だった。
一緒に過ごしたい人はいる。ただ問題なのはその相手が、忙しいことだ。
クリスマスだからといって気を利かせてくれるような仕事場ではないようで、最早諦めた方がいいのかとも思っている。

休みも不定休で、夜も昼もない。
昼夜の逆転など一日単位で切り替わる、そんな忙しい人間だ。
それでも常に笑っているのは、どうしてだろうか。
同じソファに腰掛ける相手の、緩んだ顔をただ横から眺めてみる。
少し下から見ると、大分疲れていつようにも見えた。

「・・・詰まんねぇ」
「何が？」
「アンタ今日もまた、仕事」
「そりゃあ、大人だからなァ」

仕方ねぇさ、と。
何かと言えば大人という言葉を使って、はぐらかす。疎外感とも言っていいかもしれない。
境界線を引かれているようで、気に食わないのだ。
大人だからと割り切れてしまうその世界へ。自分も、行きたい。
そうすれば少しだけわかる、気がするのだ。

「ガキは遊びが仕事なんだから、遊べばいいだろ？」
「そうやっていつもガキ扱いかよ・・」
「嫌なのか？」
「誰が喜ぶかよ」
「へぇ・・」

ガシガシと赤い髪を掻いて、片目を閉じる。
眠そうな目は、いつもと同じ、人をバカにした目だ。

「じゃあ、大人のお前にはコレは必要ねぇかな・・」

差し出されたものはあの、クリスマスを彩るケーキの注文書だ。
唯一既に書き込まれている受け取りの日にちは２４日、その日。

「なんだよ、コレ・・」
「２５日は仕事だけどな、２４日は休みが取れた」

早速どのケーキにするか、と覗き込んできた顔が近い。
エースは一言だけチョコのがいい・・と呟いてみて、すっと近い赤い髪を梳く。
意外にもしっかりしているその髪が、ふわりと目を掠めた。

「悪ィ・・つーかありがとな・・」
「らしくねぇなァ、笑っとけよ」
「あ、あぁ・・」

目の前の男を見て、エースは複雑にはにかむ。

「よし、じゃあ・・仕事行ってくるわ」

そうして挨拶がてら軽く抱き込まれた時に触れた指が、少しだけ震えていて。
エースは子供でいるのも悪くない、と初めて思ったのだ。